その２
その後、天気も良くなり、海に日が差し込んでからは、網カゴにパッタリとアイナメが
入らなくなり、変わりに石ガニがポツリポツリ入る程度の状態になった。
竿にも相変わらず当たりなし。 いつも釣れない時は胴つき３本針仕掛けに助けて
もらった。針の上にこませカゴを付けて、コマセを放出すると、小メジナ、海タナゴ、
馬ズラハギなどがピラニアのようにやって来て楽しませてくれたのだが今日はダメ。
ボラ軍団が行ったり来たりしているだけで、全く魚が寄ってこない。ピンチだ。
マーさんは、へち際にカワハギ仕掛けを落とし込み、辛抱強く粘っている。そして
見事に２０ｃｍ級のアイナメをゲット。更にハゼも釣り上げ、立派に｢釣り｣をしている。
五目釣りのよっさんとしては、何としても竿で獲物をゲットしなくては。このままだと
網カゴの獲物だけで終わってしまい、釣り仲間に｢漁師｣と呼ばれてしまうよ。
ＡＭ９：００、あまりにも釣れないので朝食にする。メニューはモツ鍋。卓上ガスコンロ
を持ち込み、クーラーＢＯＸを風除けにしてグツグツとやる。熱くて旨いんだ、これが。
しかしこの時、信じられない光景が目に飛び込んできた。風除けに使っていたクーラー
ＢＯＸが、ガスコンロの熱で溶けかかっているではないか！
大変だ、中のアイナメが茹でアイナメになってしまう。（ならないっちゅうの…。）
ＰＭ１：００、いろいろな釣り方を試みるが、やっぱりダメ。イソメを付けた投げ竿を
２本置き竿にして仮眠することにした。いつもの事ながら２時間くらいしか寝ていない
ので、無理してでも途中で寝ないと帰りが心配だ。事故ったら大変。
＊早起きして車で来る人は、途中で仮眠することをお勧めします。
ＰＭ２：１０、目が覚めたので、置き竿にしておいた２本の様子を見に行った。
竿を手に持つ、｢ん〜軽い。｣もう一本の竿を持つ、｢ん〜やっぱり軽い。｣ダメだ…。
回収してみると、なんとタラバガニのような形をした可愛いカニが付いてきた。
｢ベビータラバ｣と命名し、記念写真を撮って海に帰ってもらった。
この時間まで竿に魚を掛けなかった事は、ここ数ヶ月なかったのでショックが大きい。
そこでついに決断。｢旅に出よう！｣右方向に２００ｍほど歩くと、観光船発着所がある。
カイズの数釣りができる有名な場所。海側に小さな堤防があり、ここは柵が無い為
子供でも釣りやすい。胴つき３本針仕掛けの竿を持って行ってみると、子供達が騒ぎ
ながら何か釣っていた。見ると１５ｃｍ程の海タナゴ。これを見た瞬間私は勝利を確信
した。｢釣れる、ここは絶対釣れる！｣
バケツ、コマセを持ってきていなかったので、持っていた竿で場所を確保して急いで
戻る。マーさんに｢海タナゴ釣れてるみたいよ｣と言い残し、キープした場所に急いだ。
はやる心を押さえて、場所取りで置いて来た竿を手にとり、リールを巻き上げてエサを
付けようとしたが、あら不思議。いくらリールを巻いても胴つき３本針が姿を見せない。
｢あ、さては海タナゴくんが沖まで引っ張って行ったな。｣などと勝手に想像しながら巻く
ひたすら巻く。でもおかしい、こんなに巻かなくてはいけないはずがない。
｢オオット！｣ここでやっと気が付きました。自分の竿が隣に置いてある事に。
私は、他人様の投げ竿を一生懸命巻き上げていたのでした。持ち主はどなたかな？
周りを見渡すがこちらを見ている人はいない。すまない気持ちで一杯だったが、さり
げなく元通りの位置に置いて、自分の竿にエサ付けを開始した。その時、投げ竿の
持ち主が登場。若いお兄さん。一応礼儀だ、ワビを入れなくてはなるまい。
私、｢すいませ〜ん、さっき間違えて巻いちゃいました〜。｣
その方、｢は〜い。見てました〜。｣
（ゲッ！見とったんかい！顔が真っ赤になるのが自分で分かった。すごく恥ずかしい。）
それが縁で会話も弾み、その方はカレイを狙いに来たが、釣れたのはタコだったとの
事。バケツを見せて頂いたら可愛いタコが丸くなっていた。やはりカレイは食いが悪い
らしい。
さて、私自慢の胴つき３本針仕掛けのパワーがここで発揮される。底立ちを取りチョイ
と巻き上げてコマセを放出。すぐに｢グッググッググググ〜ッ｣と竿がしなる。巻き上げる
と１８〜２０ｃｍ級の海タナゴが一荷で掛かってきた。これは面白い！更に釣る釣る。
一人で釣っちゃ申し訳ない、ここでマーさんに電話連絡。しかし、｢こちらはＡＵ留守番
電話サービスです・・・｣何しとんねんこの絶好のチャンスに！また２００ｍ歩くのもイヤ
なので、一人でひたすら釣る。
ふと気が付くと、隣にふっくらとした可愛いおね〜ちゃんが、うらやましげに見ている。
おね〜ちゃんが、｢ずいぶん釣れますね〜｣
私、｢そちら、エサは何使ってます？｣ おね〜ちゃん｢青イソメです。｣
付けエサはオキアミが良く食うので、私のエサを進呈。釣る釣る、おね〜ちゃん。
とても嬉しそうだ。お礼にという事で熱いコーヒーを入れて頂き、チーかま、魚肉
ソーセージのお土産まで頂いてしまった。
人なつっこいおね〜ちゃんで話がはずむ。龍ヶ崎からお父さんと一緒に来ている
との事で、私と同様、毎月｢陸っぱり釣り情報｣を購入しているとか。
根っからの釣り好きらしい。あ〜もう１５年早く出会っていれば、などと妙な事を考え
てしまった。
（許せ、妻よ。あなたも穴子を豪快に鷲づかみにするぐらいだと嬉しいんだが・・・。）
約一時間、海タナゴで楽しませてもらい、残りの時間はアジ釣りに勝負をかける事に
した。お友達になった、お兄さん、おね〜ちゃん・お父さん達に別れを告げ、いざ我が
陣地へ。小さな水汲みバケツの中で、１５尾の海タナゴが酸欠状態になっている。
マーさんに釣果をお見せすると、｢俺もいってくる！｣と、すっ飛んで行った。
｢もう時合いは終わったみたいよ・・・。｣と言い出しにくかった・・・。